52という年端もいかない聖陽の影の少年が今回の任務のパートナーだと聞かされた時は驚いた。度々聖陽の影の視察をしていたバーンズはその少年のこともその実力も知っていた。協力者としては申し分ないと思っていたが、それにしてもこの間ようやく小学校を卒業したくらいの年齢の少年を、第1特殊消防隊の中隊長と同じ任務に、しかも(バーンズがいるとはいえ)単独でつけさせるなど、いくら聖陽の影といえど非道ではないか。
だがバーンズには拒否する権利はない。子供を危険な目にあわせることにあまり乗り気ではなかったが、52となんとかコミュニケーションをとりながら任務をすすめていた。
「少し先に立ち入り禁止と書かれた扉があるだろう、」
バーンズが声をかけるが、52は動かない。
「52?」
「どれだ?」
「立ち入り禁止と……」
そこでバーンズははた、と思う。教会に拾われた自分は教典を読むため読み書きを教わったが、この子供がそんな教育を受けられているはずがない。皇国の識字率は100パーセントではないということは知識では知っていたが、バーンズははじめてそれを突き付けられ少なからずショックを受けた。
「赤い丸と、赤いななめの線が組み合わさった図形が書かれている扉だ」
「あれか」
「ああ」
52はその説明で理解したようだった。52の能力も高く、作戦は無事、迅速に完了した。
バーンズは52のことを考えていた。口達者であるため気づかなかったが、52は文字を知らないのだ。そうであれば、文字が読めずに困ることもあるだろう。だから、読み書きできるようになってほしい思う。彼にやる気があれば、だが。
作戦完了予定の時刻まで時間があることを確認すると、バーンズは52をバーンズの自室に導いた。
「あんたもか、けっぺきそうなかおしておさかんだな」
部屋の扉を閉めた途端、52から出たのはこんな言葉だった。
「いや、違う」
バーンズが否定すると52は少し寂しそうな表情をした気がした。だがすぐにいつもの調子に戻る。
「おれをへやにいれるってことはそういうことだろ」