「おまたせしました、和栗のモンブランとイチゴスペシャルです!」 「どーも」 円形の広場の中心にある噴水。それを囲むようにあるキッチンカーからクレープを二つ受け取ったジョーカーは、そのうち一つを少し離れた場所に立つバーンズに渡した。 「ってか、イチゴスペシャルって、ジジィのくせにかわいいの選びすぎじゃねェか?」 注文から商品が手渡されるまでどうにか耐えていたが、流石にこらえきれずにジョーカーがぶは、と吹き出す。大真面目な顔で選んで神妙な面持ちでバーンズが注文時に発した『イチゴスペシャル』がツボに入っていたらしい。 「そうだろうか」 「ひひ、まあいいけどよ、美味そうだし」 座ろーぜ、と噴水を背にした手近なベンチに並んで座って、ジョーカーは中央にひとつだけ乗っている渋皮煮をつまんで口に入れてからクレープにかぶりつく。 「ん、うまい」 表面はパリッとしながらもモチモチの生地に、たっぷりの生クリームと刻んだ栗が包まれていた。丸められた皮でできた円を覆うように栗を贅沢に使用したマロンクリームがたっぷり絞られており、渋皮煮が乗っていた場所は少しへこんでいる。 「イチゴスペシャルもうまそうだな」 ずい、とジョーカーが前のめりになってバーンズの手の中にある歯型がついたクレープを覗き込む。たっぷりの生クリームとカスタードクリーム、それに負けない量のイチゴは切られ、花弁のごとく並べられ包まれていた。 「一口どうだ?」 食べたいのだろう、と差し出されたクレープにジョーカーは無遠慮にかじりつく。もったりとした二種類のクリームの甘さの中にあるイチゴの酸味が嬉しい。 「ん、うまいな」 咀嚼しながらジョーカーも栗のクレープを差し出せば、がぱ、と大きく口を開けてバーンズも一口。 「ふむ、栗も良いな」 「ガッツリいきすぎだろ」 ジョーカーの一口より大きく抉り取られたクレープを見て、反撃とばかりにバーンズの手首を持って引き寄せた。今度はめいっぱい大きくかじる。これでおあいこだ。 「あ」 「ム?」 ジョーカーの手がバーンズの顔に伸び、バーンズの唇の端についたクリームを親指で拭う。 「ついてるぜ、ガキみてェ」 「気が付かなかった」 笑いながら、ジョーカーは自然な所作で親指のクリームを舐め取った。 「お前好みに戻っただろうか?」 「調子乗んなよ。ま、及第点だな」 すっかり中身がなくなった包み紙を小さく丸め、バーンズは髪を揺らす風を感じ目を細める。隣に座るジョーカーは内ポケットから出したソフトパックを振って出てきた煙草を咥え火を点けた。両腕をベンチの背もたれにかけ、ふぅ、と秋の高い空に煙を溶かした。 「家でできっかな、」 「クレープか?」 「楽しそうだろ。家でだったら好きなもん包めるぜ」 何がいい?とバーンズに聞きながらジョーカーは冷蔵庫の中に何が残っているかを思い出す。生クリームなんてものは当然ない。たまご、ウインナー、チーズ……。おかず系クレープか? 「店のメニューにはリンゴかなかったな」 リンゴ。キッチン脇の段ボールに売るほどある。バーンズが好物だと公言しており、よく買うしよく貰うのだが、実際よく食べるためありがたくもある。 「確かにクレープでリンゴって聞かないかもな」 クレープでリンゴ。ジョーカーはリンゴをクレープとどう合わせるか想像する。 「あー……焼きリンゴでどうだ?バニラアイス乗っけんだよ。シナモンシュガーと……仕上げにちょっとバーナーで炙ってさ」 「ふむ、」 バーンズが興味深そうに顎を触る。よし、明日のおやつはこれで確定だな、とジョーカーはその横顔を見て口角を上げた。 ジョーカーは携帯灰皿を取り出して煙草を押し付ける。立ち上がったジョーカーは、ぐ、と両腕を伸ばして肩まわりをほぐしたあと、腰に両手を添えてから振り返った。 「そろそろ行こうぜ」 「そうだな」 ジョーカーはバーンズからクレープのゴミを奪うと、自分の分とまとめてゴミ箱に投げ入れた。立ち上がったバーンズの少し後ろを歩く。 「52」 「なんだァ?」 バーンズの歩調が緩む。それを意識していなかったジョーカーがバーンズに追いつき並んだところで、バーンズは歩調を戻す。 「理由がなければ隣に」 「Sure.」 肩を並べて歩く。頬に当たる秋の入り口の冷たい風は、存外心地よかった。
バンジョカ!!!なんでもない時間過ごせ!!!!!(いつもの)
「秋の昼」、秋の季語として歳時記に載ってたんですけど、そんなんもアリなんか〜と思いました。